「近藤くん、本当なの?」
 颯は沈黙を貫いている。
 「……実際どうだったのか私は知らないけれど、もう私と付き合ってるなんて嘘、言わないでね」
 相手は何も言わず、静かにその場から去っていった。
 私はここまで冷静にやっていたつもりだったが、ことが済んでから、少し心が痛くなった。
 文化祭の後に優しくしてもらって助けてもらった人が、まさかそんなことを言いふらしていたなんて、ただ時々やりとりとしていただけだったし、こっちは全く興味はなかったのに。
 信じられない。
 廊下には相変わらず生温かい風が流れていたが、妙に暗い空気を破るように、パッと明るくて大きな声が響いた。
 「で、田川さんは今彼氏いるんすか⁉︎」