「赤のボールペン、ノート一冊……」
 ある夏のお昼休み、私は財布を手に購買部に向かっていた。
 3階から階段を下り、1階へ向かう。
 棚いっぱいに並んでいるボールペンの中から目当てのものを探していると、
 「田川さん」
 と、誰かに呼ばれた。
 「はい、あっ、村田くんだね」
 声の主は8組で野球部の健斗である。
 背の高い彼を前にして、私は首をくっと上げた。
 「田川さん、近藤と付き合ってるってまじすか」
 「え?いや……付き合ってないですよ。近藤くんがそう言ったの?」
 健斗は大きく頷いた。
 若干興奮気味である。
 「あいつ、田川さんと付き合ってるって、去年の秋くらいから言ってましたよ」
 私は何か勘づくところがあった。