「田川さん、俺のチョコはー?」
 「颯だけもらえるのはずるいってー!」
 「日向子ちゃん、私もチョコ欲しいー!」
 8組の教室から出たと当時に、廊下に出ていたたくさんの人が集まった。
 「1人1個ずつね」
 私はそう言って、一人一人にチョコを手渡していく。
 紙袋はあっという間に軽くなったが、スプーンが1本だけ残っていた。
 私は自分で作ったチョコを自分で食べるのも(わび)しいし、せっかくなら誰かに貰ってもらおうと9組の教室へ向かった。
 「こんにちは……1年2組の田川ですけど……今日チョコを配ってるんですけど、今1本だけ残ってて、どなたか貰っていただけませんか」
 教室の入り口からひょこっと顔を出して話すと、元気の良い一人の男子生徒が近づいてきた。