「うーん、向こうは行けなさそうだね……。もし大丈夫だったら、向かいの水道に行く?」
 私は向かい側の教室を指差した。
 「おう、とりあえず早く洗わなきゃな」
 私と男子生徒はスッと立ち上がり、私が先を歩いた。
 「もしかしたらちょっと騒がしいかもしれないけど」
 念のために断っておいたが、手を洗いに行く本人は何ともないようだった。
 図書館の前を通って角を曲がると、色々な人の話し声が混ざり合った喧騒が聞こえる。
 私は角からひょこっと顔を出した。
 「あ、田川さんだ」
 誰かが私が来ていたのに気がついたようで、その一声で混雑していた廊下が一気に開ける。
 「すみません、皆さん。お疲れさまです」