色々な思いが溢れてくる。
 でも、ここで立ち止まっていてはいけない。
 早く行かなきゃいけない。
 私は、誰にも気づかれないように、中庭を避けて足早に校舎を出た。
 学校の外には、たくさんの花をつけた桜の木が揺れている。
 会いたかった、最後に一言、「さようなら」でもいいから、言いたかった。
 ひと目見たかった……。
 そう思うと、自然の涙が溢れてきた。
 さようなら。
 声にも出さないが、心の中で呟いた。
 さよなら、学校。
 さよなら、みんな。
 さよなら、上原くん。