3月、いよいよ卒業の日が来た。
 卒業式は、あっけなく終わった。
 ただ、式に出て、クラスでホームルームがあって。
 ああ、卒業かと思った。
 教室には母が来ていたが、私は友人たちと話す間も無く、母に手を引かれて教室を出た。
 「この後写真を撮るから、すぐに来てね」
 この日、数時間後には写真館で家族写真を撮る予定があった。
 母はそう言い残して、先に学校の外へ向かっていった。
 私は、少しだけ窓から中庭を眺めた。
 賑やかな中庭。
 見覚えのある集団の姿も見える。
 やっぱり憎いけど最後に──会いたかったなあ。
 会いたかった、会いたかった。
 やっぱり、好きだって、それでも好きだったよと、伝えたかった。