2月に一度だけ、3年生全員が登校する日があった。
 この日が大掃除があったが、私は担任に頼まれて、職員室に配布物を取りに行っていた。
 「あ……」
 そのとき、偶然にも良太とすれ違った。
 良太は隠れるでもなく逃げるでもなく、挙動不審な様子はなかった。
 しかし、確実にこちらを見ているようでありながらも、その目は伏し目がちであった。
 このとき、なぜか「怖がられている」という感情を持った。
 これがその時には理解できなかったが、後になって、10月のことのせいだと納得した。
 せっかくすれ違ったのに、一言も掛けられないのは少し寂しいとも思ったが、やはりこの時はまだ、彼のことを憎く思っているところもあった。