私はそれを横目にさらに道を急ぐ。
 この先に良太がいることなどつゆ知らず──。
 駅前の交差点に着いた。
 ここを渡って角を曲がって……バスロータリーを走れば間に合いそうだ。
 私は時計を片目に、車の往来を確認して横断歩道を渡った。
 右側にどこか見覚えのあるような人影がいたかもしれなかったが、きっと気のせいだろう、そう思った。
 そしてロータリーを走り抜けて、電車がホームに入る音を聞きながら階段を駆け上がる。
 私は息を切らし、発車ベルと同時に電車に乗り込んだ。
 今考えれば、あの人影はほぼ間違いなく良太で、その前の健斗たちの行動から何らかの連絡があってもおかしくはないと思う。
 あの交差点で、私が立ち止まって、振り返っていれば……と思ったこともあったが、あの時はセンター試験を目前にしていて、私の頭の中には勉強しかなかったので無理もないことだと落とし込んでいる。