そう告げると、目の前の彼は、
 「あ〜、残念、田川さんと一緒にいっぱい歌いたかったのになあ〜、これでも俺、歌上手い方なんすよ」
 とカラッと笑い飛ばした。
 ますます訳が分からない。
 「もう、この際田川さんのこと好きなやつ、全員出てくればいいんじゃね⁉︎」
 とある野球部員がそう言ったが、急にあたりがしんと静まり返った。
 彼らは一体何がしたいのか。
 また、静寂を破るように、さっきの彼が口を開いた。
 「そういえば、上原が、こないだシャーペン落とした時に、急に『あ、日向子ちゃんのこと思い出した』って言ってましたよ!あとは授業中にずっと田川さんの話してたり〜」
 「ちょ、お前、それは言わない約束だったよな」
 ペラペラと語り出すその人と私の間に良太が慌てたように割って入った。