「近藤、貰えよ」
 という声が湧き上がる。
 修学旅行でも少し怪しいとは思っていたが、まさか、颯はチョコが欲しいなどど言っていたのだろうか。
 今日も良太の姿は見当たらない。
 チョコが余っていると言ってしまったのは誤算だったかと少し後悔した。
 間違っても他人のことを彼女だと言いふらしていた人には渡したくなかったが、この状況では断ることもできない。
 「近藤くんね……はい、どうぞ」
 私は少し笑いながら颯にチョコを渡したが、内心良い気持ちではなかった。
 颯は喜んでいる様子だし、私も彼に助けてもらった節はあるのでそこまで忌避しなくても良いはずだが、やはりすっきりとはしない。
 大きな紙袋の中には、小さな紙袋がひとつ。