「困ったなぁ。誰もいないのかな」



 都会では考えられないような、不用心さである。

 しかし、こういった家はこの地域では本当に多い気がする。



「すみま……」

「なにか用か?」

「きゃー」



 声は中からではなく、すぐ真後ろから聞こえてくる。

 前しか気にしていなかった私は、あまりのことに悲鳴を上げ、しゃがみ込む。



「わ、な、なんだよ」



 振り返るとそこには先ほどぶりである従兄の戒が、やや困ったような顔を浮かべ立っていた。