十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

「ベビーリング、作ってくれたんだね」

ベビーリングは、赤ちゃんが生まれた記念に作る指輪。
赤ちゃんが生まれた感謝の気持ちを表したり、これから健康に育ちますようにという願いを込めて贈ることが多い。
リングの中心には、小さな宝石がついている。
その宝石は……。

「誕生石、入れてくれたんだ」
「当然だろ」

その誕生石は、娘の指輪だけではなく、他の2つの指輪にもしっかり嵌められていた。
内側を見ると、全部の指輪の娘の誕生日と時間が記載されている。

「もしかしてこれ……」

私が尋ねようとすると、理玖はこくりと頷いてから自分の左手を私の前に差し出した。

「俺と美空、赤ちゃん……3人のおそろいの指輪を作りたかったんだ。俺の指輪は、美空に今はめてもらいたい……いいか?」
「もちろん」

私は、もう慣れた手つきで理玖のサイズぴったりに作られた指輪を手に取った。
普通男性用の指輪は宝石をつけることは稀だけど、この指輪にはちゃんと誕生石が埋め込まれているのだ。
きっとこれは、理玖なりの娘への愛情なのかもしれない。
理玖は、自分の指に指輪がはまったことを嬉しそうに眺めると

「美空の指も出して」

と私を少し急かした。
しょうがないな……と笑いながら

「優しくしてね」

とおねだりした。

「今、それ言うのやめて……」
「どうして?」
「…………お前を抱きたくなるから」

と、恥ずかしいことを言ってきたので、どつきたくなった。