「だから、会わせたくなかったんだ」

理玖の両親の家を後にし、入籍を済ませた帰り道。
一緒に理玖の家に戻る道中に、理玖がぼやく。

「でも、安心したな……」
「何に?」

私の呟きに、理玖が不思議そうに聞く。

「私を、家族だって受け入れてくれて」

もうすでに、父も母もいない。
家族と呼べる人もほとんど残っていない。
この世界で、私と血がつながっている人を感じられないだけで、こんなに不安な気持ちになるなんて知らなかった。
でも、そんな中で理玖が側にいてくれて、家族になりたいと言ってくれたこと。
理玖を大事にしている家族が、私を家族だと受け入れてくれること。
そのことが、私に絶対的な安心感を与えてくれていた。

理玖は、私の言葉にいたずらっ子のような笑みを浮かべてから耳元でこう囁く。

「新しい家族も、早く作らないとな」

その言葉の意味は、これから熱い夜を過ごすということ。
まだ外だというのに、そんなことを隠さずストレートに言う理玖に戸惑いはするが、それが嫌ではない自分もまたいる。

きっとそれは私も同じ気持ちだから。

「優しくしてくれる?」

私が、わざと上目遣いでいうと、理玖は私の唇を塞ぐように軽くキスをしてから

「優しくしたいけど、激しくなったらごめん」

と予告をしてきた。