「聞いても良いか?」
「今度は何?」
「いつ、結婚を決めたんだ?」
「…………ついこの間」
「それで、1ヶ月後に結婚指輪が必要なのか?」
「ちょっと、事情があってね」
「そうか」

事情、のことは聞かないでいてくれた。
そういうところも、理玖の良いところ。
私が好きな理玖の1つ。

「最後にもう1つ、わがまま言っても良いか」
「どうぞ」
「もっと早く再会したかった」
「それ……は……」
「はは、冗談だ」

それが、冗談ではないことは、声色で分かってしまったが、聞かなかったフリをした。

「それより美空」

理玖は上半身裸のまま、むくりと起き上がり、近くに置かれていたスケッチブックを私に渡した。

「ほら。描けよ。お前がつけたいと思うピンキーリング」
「でも……」

もう、何年もデザインなんてしていない。
それに、そもそも結局ちゃんとアクセサリーのデザインを勉強していない。
どういうデザインであれば、ちゃんと形になるのか、今の私には分からない。

そんな事を考えていた私の気持ちを、理玖は読み取ったのだろうか。

「任せろ。お前の理想を、俺が必ず実現させる。それともお前は、俺の実力を信じられないのか?」