十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

「お、このサイズ良さそうだな」

そうこうしているうちに、理玖が見つけた私のサイズは、5号と6号の間の5.2号というサイズ。

「ゆるくもなく、きつくもない。ちょっとむくんでもこれなら大丈夫だろう」

そのサイズを見つけるのにかかった時間は、5分程度。
1回、2回くらいつけただけでサクッと決められるはずのサイズに、それだけの時間を理玖はかけてくれた。

「本当は、たまに痛くなる方が指輪の存在を忘れないでいてくれるかと思ったけど」

と茶化すように理玖は言ったけど、それが本心なのだろうと分かってしまう程、理玖の想いが胸に届いてしまった。
私が、この想いを捨てたと言うのに、この天才の中に私がまだ存在していることが……悲しいくらい嬉しいと思ってしまった。

なんて、おこがましい女なのだろう、私は。

「……痛くしてくれてもいいよ」

それが、理玖を嫉妬という感情で捨てた罰だというのなら、いくらでも痛みを与えてくれればいいのに。
その方が、ずっと楽なのに。
理玖との記憶と、耐え難い程の痛みがリンクしてくれる方が。
それなのに……。

「馬鹿」

これから私は左の小指を見る度に、優しいくて温かい理玖の指と声を呼び起こすのだろう。