私の小指が心なしか細くなったところで、理玖はまた、スケッチブックを開いた。
鉛筆を持つ手を動かすと、スケッチブックに私の左手が現れた。黒子や爪の形までしっかり再現されていた。
「デザインをするために、いくつか聞きたいことがあるけど……いいか?」
「うん。……何?」
「素材の希望はあるか?」
それは、指輪の印象を大きく左右する体。
月のように黄金に輝くイエローゴールドか。
桜の花のようにしっとり輝くピンクゴールドか。
それとも、昼間の太陽のように眩しいプラチナか。
どれを選んでも、きっと理玖なら軽々と扱ってしまうのだろう。
中野さんとの結婚指輪は、プラチナを選んだ。
シンプルで、誰がつけても大丈夫なデザイン。
私らしさの欠片はないけれど、決して失敗がない、無難なものを選んだ。
今、私はオーダーメイドしようとしているピンキーリングは、その左横にある小指につけるもの。
ピンキーリングを見れば、結婚指輪も視界に入る。
チグハグなデザインは不協和音を呼ぶ。
だから本来であれば、先に決まった結婚指輪に合わせた素材……つまり、プラチナにするべきだろう。
結婚指輪と同じように、ずっとつけ続けたいと思ったのだから。
けれど……。
「理玖は、私に合う素材はどれだろ思う?」
「プラチナ」
即答された。
「お前には、プラチナがいい」
「その根拠は?」
「雑に扱っても、大丈夫な素材だから」
その言葉の中に、一体どれだけの意味が込められているのだろう。
理玖も、思ってくれているのだろうか。
どんな時でもずっと指輪をつけていて欲しいと。
聞きたかった。
けど、聞くべきじゃないと思った。
鉛筆を持つ手を動かすと、スケッチブックに私の左手が現れた。黒子や爪の形までしっかり再現されていた。
「デザインをするために、いくつか聞きたいことがあるけど……いいか?」
「うん。……何?」
「素材の希望はあるか?」
それは、指輪の印象を大きく左右する体。
月のように黄金に輝くイエローゴールドか。
桜の花のようにしっとり輝くピンクゴールドか。
それとも、昼間の太陽のように眩しいプラチナか。
どれを選んでも、きっと理玖なら軽々と扱ってしまうのだろう。
中野さんとの結婚指輪は、プラチナを選んだ。
シンプルで、誰がつけても大丈夫なデザイン。
私らしさの欠片はないけれど、決して失敗がない、無難なものを選んだ。
今、私はオーダーメイドしようとしているピンキーリングは、その左横にある小指につけるもの。
ピンキーリングを見れば、結婚指輪も視界に入る。
チグハグなデザインは不協和音を呼ぶ。
だから本来であれば、先に決まった結婚指輪に合わせた素材……つまり、プラチナにするべきだろう。
結婚指輪と同じように、ずっとつけ続けたいと思ったのだから。
けれど……。
「理玖は、私に合う素材はどれだろ思う?」
「プラチナ」
即答された。
「お前には、プラチナがいい」
「その根拠は?」
「雑に扱っても、大丈夫な素材だから」
その言葉の中に、一体どれだけの意味が込められているのだろう。
理玖も、思ってくれているのだろうか。
どんな時でもずっと指輪をつけていて欲しいと。
聞きたかった。
けど、聞くべきじゃないと思った。



