十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

「手……むくみやすい?」
「え?」
「かなりむくんでるぞ」
「あー……」

自覚はあった。
デスクワークで指を酷使するようになってから、急にむくみやすくなった。
最初の頃は、指が太くなるのを気にして、ハンドクリームでマッサージもしていたが、いつしかマッサージをする余裕すら無くなっていた。

「太ったってことかな」

あはは、と笑って誤魔化した。

「ちょっと待ってろ」

理玖はそう言うと、自分のポケットからハンドクリームを取り出した。

「え!?ちょっと、理玖!?」

理玖は、適量を手に取ると私の小指を優しくマッサージしてきた。

「何で……!?」
「ちゃんと、お前にピッタリなサイズで作ってやりたいからな」
「こ、こんなこと、他のお客様にもしちゃってるの?」
「しない」

そう言うと、理玖は顔を上げた。
私と目を合わせてきた。
そうして、彼は再び、私に言い聞かせるようにこう言った。

「どんな形であれ、お前の指に星を降らせるんだ。一生使えるものを作ってやりたい」

理玖の親指と人差し指は、とても優しく私の小指をほぐしてくれた。
気持ちよさと居心地の悪さが一緒に押し寄せてきた。