十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

「お前、嘘つく時……目線が1回下がった後、右上を見るんだよ。必ず」
「ええ!?」
「その様子じゃ、知らなかったみたいだな」

知らなかった。
でも、確かに思い当たる節はある。
イメージを考えるとき、つい右上を見てしまうのは自分でも自覚があったから。

「理玖は、どうして気づいたの?」
「やっと呼んでくれたな」
「え?」
「名前」

しまった。
心が昔に戻りすぎていたのだろう。
ほとんど無意識に、彼の名前を自然に呼んでしまっていた。

「如月って言われて、俺……結構傷ついた」

その言葉の意味を、私はきっと深読みするべきではない。

「どうして気づいたかって、聞いたな?」
「う、うん……」

微かに理玖は、ため息をつくように微笑んだ。

「好きな女の事は、ずっと見ていたんだから気づいて当然だろ」

そこに、過去形がなかったことに気づきたくなかった。