十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

「私もこれ、お願いしたいなーって……」
「何で」
「え?」

間髪入れない理玖の問いかけに、私は本気で動揺した。
私は過去、この人の「何で」によく追い詰められた。

何で、その絵を描いたのか。
何で、そんな選択をしたのか。

本人は純粋に知りたいだけなのだろうが、私はこの人から聞かれる度に責められている気持ちになったから。
それも理由で、当時の私は自信を無くしていたのだ。
理玖の前で、物を作ることにも、共に側にいる事にも

「結婚指輪じゃなくていいのか?」

私は何て勝手なんだろう。
この人の口から、他の人との結婚指輪の話題を出されただけで、胸がこんなに痛くなるなんて。

「もう、店決めたから」
「心配してたんだ」
「え?」

この人は、何を心配しているの?
私を、心配してくれているというの?
10年ぶりに会った私を?

本当に、自分勝手だ。私は。
それが、こんなに嬉しいなんて。