十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

理玖は、あっさり私の嫌味を受け入れただけではなく、私の作品を面白いと言った。

「な、何言って……」
「あれ、あんたの作品でしょう」

理玖が指差したのは、ちょうど先日完成させたばかりの絵。
人間の指に星が宿り、その星が赤い糸として別の誰かに繋がる。
そんなストーリーをイメージして描いたもの。
自信作だったけれど、先生からは酷評されたものだった。

「あんたの絵には、ストーリーが見える。俺にはないから、羨ましいよ」

そう言った理玖の目は、決して嘘で曇っていなかった。
私は、とても単純な人間だったのだろう。
たった1回のこのやりとりがきっかけで、私は理玖に憧れている自分を認められるようになった。