溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。

「だから気にしないで?」

「ありがとう……ございます」


本当、申し訳ないことした……。


「はいはい、よしよし」


先輩の手が伸びて、優しく私の頭を撫でる。

いま、先輩が急に触れてきてびっくりしたのに……!やっぱり話通じてないかも……。

そんなことを思いながらも、ふと思い出す懐かしい感覚。


優しくて、けれど冷たい手が、とてつもなく懐かしい。


「っ……」

「あ。見えてきた。もうすぐ着くよ」

「……え?」


見えてきたと言われ移した視線の先には……。


みたことのないぐらい、大きなお城のようなお屋敷があった。


「も、もも……もしかして、あれですか……?」


ぷるぷる震える私の指先が差したお屋敷。


「うん?そうだよ」

「えええっ……」

「あのぐらいの屋敷、普通じゃない?」

「ふ!?普通じゃないですよ!!」


き、金銭感覚がおかしいんじゃないの……!?


「んー。そうかな。」

「そうですよ!」

「けど、僕の家族はみんなあのぐらいの屋敷持ってるよ?」

「……え?」


“みんな、あのぐらいの屋敷”?!?


「も、もしかしてあのお屋敷って千星先輩だけのお屋敷なんですか!?」

「うん。10歳の頃におじいさまにもらったんだ」

「じゅっ……!?」


10歳の頃に、おじいさま!?