「ねぇ、花梨。あれって、久遠先輩じゃない?」

「え?」


隣にいた椎菜が、窓の外を指さす。


椎菜の指さしたほうを見ると、校庭の端っこで久遠先輩が何人かの女の子に囲まれていた。


「久遠先輩、相変わらずモテモテだね〜」


夏樹先輩のことを取り囲んでいるのは、主に1年と2年の後輩女子で。

私が先輩の部活の応援に行っていた頃、同じように先輩のバスケを見に来ていた子たちだ。


彼女たちは、久遠先輩と一緒に写真を撮ってもらったり。先輩に、卒業祝いの花を渡したりしている。


「花梨は、行かなくていいの?」

「……行かなくちゃ」


今日で私は、夏樹先輩への片思いから卒業する。

でも、その前に私は行かなくちゃいけないところがある。


「椎菜、私ちょっと行ってくる!」


私は白の紙袋を持つと、急いで教室を出た。