それから、夏のあの日以来気まずかった私と先輩の関係が修復された。
校内で会うと声をかけ合い、お互い時間があるときは廊下でよく他愛もない話をした。
卒業を控えた3年生は、2月以降は登校する日が限られているから。
あと数えるほどしか先輩と会えないのだと思うと、自然と私の足は先輩の教室へと向かっていた。
「あっ、花梨ちゃん」
「こんにちは、夏樹先輩」
1分、1秒でも良い。
少しでも長く、先輩と一緒にいたかった。
あなたの声が、聞きたかった。
大好きな優しい笑顔を……見たかったから。
学校で先輩と会って、話して。
先輩の視界に入れるだけで良かった。
以前のように、先輩と普通に話せるようになって。
夏樹先輩に自分のことを『可愛い後輩』とまで言ってもらえて。
それでもう……十分なはずなのに。
いつからだろう。夏樹先輩にこの想いを伝えたいと、思うようになってしまったのは。