「え?」

私は、椎菜の声に思わず顔を上げる。


「久遠先輩と……気まずいままで良いの? 花梨の気持ちは、伝えなくても良いの?」


「うん、もう良いんだ」


以前、先輩の誕生日に告白しても良いかな? とか考えたこともあったけど。


私はもう先輩に、面と向かってこの気持ちを伝えるつもりはなかった。


エリカさんという彼女がいる夏樹先輩に告白したとしても、フラれることが目に見えているから。


「そっか。花梨が本当にそれで後悔しないのなら……あたしは良いんだけどさ」


『花梨が本当にそれで後悔しないのなら』


このときの椎菜の言葉が、なぜかやけに私の心に引っかかった。