ねぇ、先輩。どうしてあのとき、私の名前を聞いたんですか?


どうしてあのとき、私にクリームパンを奢ってくれたんですか?


どうして、『キミが髪結んでるところも見てみたい』なんて言ったんですか?


好きな人が……彼女がいるなら、そんなこと言わないで。


『花梨ちゃん、すごく可愛い』なんて、私を期待させるようなこと、言わないで欲しかった。


出会った頃よりも、少しずつ近づいてきていたであろう先輩との距離に胸が痛む。


そういえば、あのエリカって人も……ポニーテールだったな。


先輩と並んで歩いていくときに、ゆらゆらと揺れていた彼女のポニーテールが頭に浮かんだ。


「……っ」


私は、先輩に褒めてもらって以来ずっとひとつに結んでいた自分の髪に手を当てる。


「本当にバカだよ。私も、先輩も」


そう呟くと、私は結んでいた髪のゴムを乱暴に解いた。