カフェまではまだ少し距離があり、遠目だから私は一瞬見間違いかな? と思ったけれど。
「夏樹っ!」
はっきりと聞こえたんだ。彼女の『夏樹』と呼ぶきれいな声が。
「え、うそ。あれって、久遠先輩……?」
椎菜の驚く声に、自分の見間違いではなかったのだと悟る。
今カフェから出てきた男女のうちの男の子のほうは……やはり、私の好きな人である久遠夏樹先輩だった。
「夏樹、今日はありがとね」
そう言うと、女の子は夏樹先輩の頬にチュッと軽くキスをした。
「ちょっ、エリカ。ここ、外だって。やめろよ」
「えーっ、良いじゃない。エリカ、夏樹のことが改めて好きだなぁって思って」
そうしてエリカという人が、夏樹先輩の腕を組み、ふたりは仲良さそうに歩いて行く。