翌朝。


「う〜ん」

私は自宅の洗面台の鏡に映る自分と、睨めっこをしていた。


昨日、夏樹先輩に『キミが髪結んでるところも見てみたいな。ポニーテールとか』って言われたから。


今日はいつもよりも頑張って早起きして、髪を真ん中で結んだ。

やっぱり、好きな人の好みの女の子に少しでも近づきたいもん。


何度か結びなおして、鏡で最終チェック。


「よしっ! きれいに結べてる」


「花梨ー! まだ準備してるの? そろそろ家出る時間じゃないの?」


キッチンのほうからお母さんの声がして壁時計を見ると、いつも家を出る時間を数分過ぎていた。


「いっけない! 遅刻しちゃう」


私はスクールバッグを持つと、慌てて家を出た。