気づけば、私は先輩のことを探していた。


登下校の際の、昇降口で。通学路で。

移動教室で、3年生の教室の前を通るとき。

授業中に窓際の席から見える校庭とか。


いつも、いつも先輩の姿を探していたんだ。


見かけたら、ラッキーだなって。
会って話せたなら、もっと幸せだなって。


部活に所属していない私は、毎日放課後になると、体育館へとバスケ部の練習を見に行った。


「久遠先輩、頑張って……!」


大勢の先輩のファンの中に紛れて、部活の応援をした。


ボールを追いかける姿。

仲間にパスする姿。

時折、汗を拭う姿。


どんな先輩の姿も、キラキラと輝いていて。


バスケを一生懸命頑張る先輩が、すごくすごくかっこよかった。


たとえ、先輩から私が見えていなくても。


自分がこうして、陰から先輩のことを見ていられるだけで良かった。