没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

申し訳なさそうな上目遣いでジェラールの顔色を窺ったら、嬉しそうな彼に抱きしめられて驚いた。

「なんて可愛い自供だろう。オデットは俺の恋心を煽るのがうまいな」

「そんなつもりじゃ……あっ」

額と頬に口づけられてオデットが真っ赤になっていると、向かいのソファからコホンと咳払いが聞こえた。

「ブルノからふたりの仲は聞いておりますが、ここは教会ですのでご勘弁を」

(は、恥ずかしい……)

オデットは火照る頬を隠すように両手で挟み、ジェラールは笑って立ち上がった。

「バロ司教、私たちはこれで帰ります。お時間を取らせてすみませんでした。失礼な言動もお許しを。あなたの崇高な宗教精神と職務への真摯な姿勢には常々敬服しております」

見送りは不要と告げ、ジェラールはオデットを連れて退出した。

教会から外へ出ると、雪がチラチラ降っている。

吐く息は白く、オデットの手はすぐに冷たくなり、手袋を持ってくればよかったと後悔した。

するとジェラールがオデットの手を取り、繋いだ手を自分のコートのポケットに入れる。