でも、それは不運にも……と言うべきか幸運にもと言うべきか、匡さんとの結婚によって閉ざされてしまった。
結果、何も持っていない、自信も後ろ盾もなにもない状態で匡さんの妻の座に座っている。それが、ものすごく怖いのだ。
あの、赤い傘の女性みたいにカッコよく自分の足で立てていない自分を誰よりも知っているから。こんな私じゃ、簡単に替えが利いてしまう。
「〝好きだから〟っていう絶対的な理由がないなら、他に匡さんが私を選び続けてくれる理由を作らなくちゃって、せめてなんとか役に立てないかなって……結婚してからはそればっかり。働きたいって毎朝交渉してるけど、匡さんは首を縦に振ってくれないし手詰まりもいいところ」
自嘲するように笑ってから、麻里奈ちゃんを見た。
「せめておいしい紅茶くらいは入れられるように滝さんに習ってるんだけど、ちゃんと美味しく入れられてたかな」
まずはこの生活の中で私にもできることを、と思い、毎日のティータイムが浮かんだ。
滝さんが砕けた態度で接してくれるようになってから、お願いして紅茶とコーヒーの入れ方を教えてもらっている。
胃袋を掴め大作戦の第一歩といったところだ。
相葉くんにも花の選び方や植え方を習っているし、そのうち匡さんが頷いてくれるようなプレゼンも成功させるつもりだし、行動範囲はだいぶ狭い割にはやることがたくさんで私なりにこの生活を充実させ始めている。



