時間を計りしっかりと蒸らしてから、ティーポットの中をスプーンでひとかきし、茶こしでこしながら注いでいく。
ゴールデンドロップと呼ばれる最後の一滴は麻里奈ちゃんのカップに落とした。
正直なところ、この一滴がとてつもなく美味しいのか、どんな幸運を運んできてくれる要素があるのかは知らない。
けれど、麻里奈ちゃんのカップに落としたらなんだかとても気分がよくなったので、もしかしたら、紅茶を入れる側にとってのゴールデンドロップなのかもしれない。
ふたつのカップに紅茶を注ぎ終わり、ひとつを麻里奈ちゃんの前に「どうぞ」と置くと、麻里奈ちゃんは口を尖らせた。
「別に麻里奈、美織さんのお客じゃないし」
今更さっきの話題を持ち出され目をしばたたく。
本当にずっと反抗期みたいな態度なので、おかしくなってきてクスクス笑いながら向かいのソファに座った。
「うん。でも、こうして同年代の女の子と話すのが久しぶりだったから嬉しくて」
リビングの南側にある大きな窓から柔らかい日差しが入り込んでくる。
まだまだ朝の気配のする空気を気持ちよく思って眺めていると、麻里奈ちゃんが「なんで?」と聞いた。
「もしかして、美織さんも友達いないの?」
〝も〟ということは、麻里奈ちゃんはいないのだろうか。
麻里奈ちゃんの性格から考えると、たしかに同級生からは敬遠されがちかもしれない……と考えながら苦笑いを返した。



