「ごめんごめん。今おかわり入れるね。アールグレイだったよね。同じのでいい?」
滝さんが置いて行ってくれたワゴンの上にはお湯の入ったケトルと数種類の茶葉、それに白い陶器でできたティーポットがある。
フタをとると、最初に使った茶葉はもう払われていた。
なので、アールグレイの新しい茶葉を手に取ると、麻里奈ちゃんは信じられないものでも見たかのように眉間にシワを寄せた。
「同じでいいけど……え、自分でいれるの?」
「え、麻里奈ちゃんは普段自分でいれないの?」
別に喧嘩を売ったつもりはなかったけれど、麻里奈ちゃんのムッとした顔を見て反応を間違えたと気付く。
きっと麻里奈ちゃんの家にも使用人がいて、身の回りの世話はしてくれているのだろう。
そういう環境で育ったのならお茶も自分で入れなくて当たり前だ。
今にも噛みついてきそうな麻里奈ちゃんに「ごめん」と苦笑いで謝った。
「何でも誰かにやってもらう生活って、一般家庭で育った私はやっぱり慣れなくて。それに、こういうのを繰り返していくうちにお互いの好みとかを知っていって、友達になっていくものかなって思うし、私のお客様は自分でもてなしたいなって」
話しながら茶葉を入れ、お湯を注ぐ。
確か紅茶は高い温度でないとうまく香気成分が出ないらしいけれど、ケトルのお湯は十分熱かったようで、すぐにいい香りが舞いホッとする。



