「匡様。こちらを」
「いや。いい」
滝さんがすでに玄関先に用意してくれていたバスタオルを断った匡さんが私を下ろしたのは、お風呂場だった。
バスタオルを汚さずに済んだのはよかったけれど、浴室から出て行く素振りを見せない匡さんに戸惑う。
足を洗うのを見られるのはいいにしても、その前にストッキングを脱ぐ必要がある。その作業を見られるのは、はしたない気がしてなんとなく嫌だった。
ワイシャツをそれぞれ腕まくりした匡さんがシャワーを出しお湯の温度を確かめながら「脱げ」と言うのを聞いて、最初はキョトンとしていたけれど、そのうちに我に返りぶんぶんと首を振った。
「あの、自分で! 自分でできますから!」
匡さんが言っているのは、つまりストッキングを脱げということであって、しかも脱いだ後の素足を洗う気でいる。
そんなことはさせられないと思いうろたえている間に、脱衣所に入ってきた滝さんが素知らぬ顔で「新しいストッキング、こちらに置いておきますね」とだけ告げて出て行く。
助け舟は出してくれないのか……と思いながらその様子を眺めているうちに痺れを切らした匡さんの手がスカートの中に入りストッキングにかかるので、「じ、自分で! 自分で脱ぎますから……っ!」と今度は私がお風呂場で叫ぶこととなった。



