赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



「なにこの女! 麻里奈が見たことがないってことは、この女が嫁ってわけ?! 出てきなさいよ!」

目の前まできた麻里奈ちゃんは、私の腕を掴むと、力のまま外に引っ張り出した。小柄なのにすごい力だ。

窓枠と外の地面の高さは三十センチほどなので普通に着地はできたものの、下は芝生だ。
しかも午前中まで雨が降っていたので芝生や地面はしっとりと水分を含んでいる。

そこにストッキングのまま立つのは、なかなか気持ちの悪い感触だった。
チクチクもしているし、グッショリもしている。

はずみで脱げたスリッパが室内にあるのを確認して、まぁ、スリッパで下りるよりはまだ素足でよかったのかと思い直した。
ストッキングを捨ててしまえば、洗うのは自分の足だけで済む。

滝さんにタオルを用意してもらわないと、家に上がれないな……と思いながらも、麻里奈ちゃんになんとか笑顔を作った。

「えっと、はじめまして。木下……いえ、桧山美織です」

どう考えても悠長に自己紹介している雰囲気でもなかったものの、これが初対面だ。
失礼がないようしっかり挨拶しないと、と思い会釈したのだけれど、麻里奈ちゃんはますます目つきをきつくした。