「あの、どうしてそんな話をしてくれるんですか?」
ここに住み始めてから一カ月とちょっとの間はあまり雑談が許される雰囲気ではなかったのに、今日の滝さんの私との距離感は、明らかに今までとは違う。
そしてそれは滝さんが意識して変えてくれているのは明らかなので、その理由が気になった。
滝さんは困ったように眉を下げ微笑んだ。
「匡様に言われたんです。美織様が寂しがるといけないので、もう少し砕けた態度で接するようにと。本当なら私も最初からこんな風にお話ししたかったのですが、美織様は匡様の奥様ですから、気安く話しかけるのもどうかと思いまして遠慮させていただいていたんです」
匡さんに、話し相手がいなくて寂しいという話をしたのは昨晩だ。
それを気にかけてくれていただけでなく、もうこうして滝さんに話を通してくれていたのかと驚き、その後、心が温かくなった。
私が働きに出たいというお願いに対してだけは頑なに許可してくれないどころか、私が外出することにすらあまりいい顔はしてくれないけれど、それ以外の部分ではしっかりフォローしてくれる。
仕事で忙しいのに私を頭の隅っこに置いてくれていることが嬉しくて堪らない。
でも……そうか。
滝さんがそっけなかったのは、私を桧山家の妻として認めていないからではなく、そういう事情からだったのか。
もしかしたら程度だったけれど、家柄が家柄なだけにその可能性がずっと消えなかったので、本当の理由を知りホッとする。



