そもそも匡さんと私の正式な結婚話が初めて出たのは、私が高校二年生の夏休み明けだ。
私は匡さんが好きだったからもちろん嬉しかったけれど、そんなのは母と雅弘おじ様が勝手に盛り上がっているだけだろうと、さすがにわかっていた。
母たちは小学校時代からの幼馴染だからか、ふたりでの会話は学生みたいにノリが軽くなる。
いくら幼馴染だとしても、それだけ仲良くしていたら異性という点で眉を顰める配偶者は多いと思う。けれど、雅弘おじ様は匡さんが生まれて数年で円満離婚をしシングルファザーなので、誰も遠慮する相手がいない。
そんな状況も手伝ったのだろう。今思えばふたりは結構やりたい放題だった。
テレビの特集でテーマパークが映れば、〝今から行こう!〟と急に連れていかれたり、私がうっかり〝飛行機に乗ってみたい〟と口走ったばかりに、その週末沖縄に旅行が決まったりと、主に雅弘おじ様主導で色々な場所に連れて行ってもらった。
そんなおじ様と母だから、高校二年の夏休み明けに母から『美織は小さい頃から匡くんと結婚したいって言ってたけど、まだ気持ちは変わらない? 話を進めちゃってもいいの?』と真面目な顔で聞かれても、どうせ〝結婚させちゃおうか〟くらいの話のノリだったのだろうと思った。
だから『うん』と答えた後、母が感慨深そうに顔をほころばせているのを見て首を傾げはしてもそのまま流していた。



