匡さんはなんてことないことのように言うけれど、そんなことはないと思う。
そんな無償の愛、誰にでも持てるわけじゃない。
匡さんへの愛だったら、世界の誰が相手でも勝つと自負している私でさえ、そこまで自分の想いを犠牲にして匡さんを守ることに徹せられるかと問われればすぐには頷く自信がなかった。
「事件以降、大きく落ち込むこともなく成長していた様子だったから安心していた。でも、高校二年の夏前から急に俺との距離を取りたがっただろう。そんな美織を見て、それまであった感情が、ただの親愛だけではなく恋愛も含まれていたのだと気付いた」
匡さんと沢井さんのツーショットを見てショックを受け、大人っぽくなりたいと意識し始めた時期だ。
でも、私が敬語を使おうと呼び方を変えようと匡さんは表情にはなにひとつ感情を出さなかったから、まさかそんな明確な時期まで把握しているとは思わなかっただけに驚く。
だから「私が態度を変えたの、気付いてたんですか……?」と聞くと、匡さんは当たり前だと言わんばかりの顔でひとつ息をついた。
「あれだけの頻度で会ってたんだ。些細な変化だって見逃すはずがない」
そう言われて、でもそうかと思い直した。
私の些細な変化に気付いたからこそ、小学校一年生のあの日、匡さんは叔父さんの家に預けられた私を訪ねてきてくれたのだ。



