赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



「叔父さんのこと、私が思い出さなかったら、ずっと言わないつもりだったんですか?」

匡さんは私としばらく目を合わせてから「ああ」と返事をした。

もう、いつかのように誤魔化そうとも、嘘で押し通そうともしていない彼を見て、ふたりの間にあった距離がぐんと近付いたのを再確認し嬉しくなった。

「父親とそっくりな人間から暴力や暴言を受けていたことなんて、誰でも思い出したくはないだろう。美織が忘れているならそのままでいいと考えていたし、言うつもりもなかった」
「でも……しっかりと理由を教えてくれれば、私だって匡さんを信じられなくなりそうだとか言いませんでした。それに、もしも私が忘れたままだったら、今だってきっと匡さんに不信感を抱いたままだったと思います」

それではダメだったと思う、というニュアンスで言ったけれど、匡さんは臆することなく答える。

「だとしても、俺から言うつもりはなかった。昔の怖い経験など思い出す必要はない。……あんなトラウマを背負うのは俺だけで十分だと、今でも思っている」

ハッキリとした声に思わず息をのむ。
匡さんは、私に怖い思いをさせないためだったら、自分が私にどう思われようといいと考えていたんだ。そこまでの覚悟で、想ってくれていたんだ。

それがわかり唇を引き結んだ私に、匡さんが続ける。

「優先順位の問題だ。俺にとっては、美織が安全な場所で笑って過ごせるのが一番で、他はどうでもいい。それだけの話だ」