「付きまといは警察だってせいぜい注意止まりだ。また接近禁止に署名させたところでどうせ守らない。国の権力も法律も役に立たない場合の対処方法は昔から相場が決まっている。ああいう男は自分よりも弱い人間を選んで執拗に絡んでるんだ。だったら自分よりも強い人間がそばにいると思わせれば話も早い」
「なるほど……。あの、暴力行為はしていないんですよね?」
匡さんに怪我を負わせたのだ。別に多少の暴力はいいと個人的には思うものの、この話を始めたときから漂う匡さんの冷えたオーラに不安になった。
私と目を合わせた匡さんは、少しの沈黙の後「多少だ」と答えた。
お手本みたいに怪しい間だった。
「だが、自分の愛した女性の子どもに手を上げた上、未だに執拗につけ回して金を無心しているんだ。一発や二発、手が出て当然だ」
それは本当にその人が母の再婚相手だったとしたら、の話だと思う。
でも、それくらいで済んだのなら、私も殴られているし匡さんも怪我をさせられているのだから、お釣りがくるかと考え直す。
私が全部覚えていたら、声をかけてきたあのとき、匡さんの怪我の分だけでもしっかり殴り返してやったのに……と考えていると「美織」と呼ばれる。
視線を上げると、真面目な眼差しがそこにあった。
「そばにいれば守ってやれると思っていたのに、結局接触を許した。悪かった」
目を合わせ謝る匡さんに、慌てて首を振った。



