赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



その笑顔が、私以外に向けられているところを初めて見たからだったかもしれないし、匡さんが自身の車の助手席にその女性をエスコートしたからだったかもしれない。

雨の降る中、赤い傘を畳んだ女性に、匡さんは自分のさしていた黒い傘を傾け、雨粒から女性を守っていた。

ふたりの雰囲気や表情から〝ありがとうございます〟〝いえ〟という会話がされているのだろうとわかった。

何度もふたりでドライブして遠出した匡さんの車に、大人な女性を乗せた匡さんを見て、ショックすぎて声も出なかった。

だって、助手席に座る女性と匡さんは、誰から見てもお似合いで……きっと匡さんと私が並んでもああは見えないだろうとわかってしまったから。

スーツと制服だとかそれ以外にも、あの女性と私には見えないラインがきっとたくさんある。あの女性は、深い谷を挟んだ、匡さん側にいる。

年齢だけじゃない。経験や所作、雰囲気、微笑み方……全部、あの人の方が匡さんに合っている。
それを、一瞬にして思い知った。

匡さんは私を拒絶しなかった。

だからといって、受け入れてくれていたわけではないのだと、ただ子ども相手になだめていただけなんだと……この時、初めて知った。