気持ちを隠さない私の初プロポーズは、私が六歳の頃。記憶にはないけれど、母が証拠の映像を見せてくれたので確かだ。
『匡くん、大好き。大きくなったら私と結婚してくれる?』
幼稚園児に求婚された、当時十四歳の匡さんがその時どんな顔をしていたか、そこまでは映っていなかったけれど、『わかった』という返事だけはしっかり残っていた。
もちろん、匡さんだって本気で頷いてくれたわけではなかったのだろうと、今はきちんと理解している。
匡さんはずっとクールであっさりとした性格だけれど、決して優しくないわけではないことはよく知っていた。
匡さんは忙しい時間を縫って、頻繁に私の顔を見に家を訪れてくれたし、私の希望を聞いてふたりで遠出する機会もあった。
それまでは雅弘おじ様と一緒に来ていた匡さんが、ひとりでも私に会いにきてくれるようになったのは、私が小学校一、二年生の頃だったと思う。
『元気にしてるか気になったから』と、毎週のように会いに来ては無表情のまま言う匡さんに、私は毎回嬉しくて飛びついていた。



