赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



「なんでもないです」

そう言いながらも、即座に真顔に戻すなんて器用な真似はできず、顔は未だだらしなく緩んだままだ。

しかも今は、匡さんは椅子に座っていて私はその傍らに立っている。つまり、匡さんの方が視線の位置が低い。

しかも私はクッキーの載ったお皿を両手で持っているので、顔を隠す術がない。覗き込まれたら簡単に顔を見られてしまう。

「あの、変な顔してるので」

だから言葉で拒んではみたものの、匡さんが私の言う通りにしてくれるはずもなく、そのまま顔を見られてしまう。

こんな気持ちが駄々もれた顔を今見られるのは耐えられない……と顔はどんどん熱を持つばかりですっかり悪循環に入り込んでいた。

匡さんがどんな反応をしているのかが怖くて目が合わせられない。

いつも通りスルーしてくれていたらいいと思う反面、それはそれで悲しい気もする。
複雑な心中を抱えながらひたすら目を伏せていると、グッと腕を掴まれ引き寄せられた。

「え、え……わっ」

びっくりしながらもお皿の上のクッキーを落とさないように必死にバランスをとる。お皿を胸と腕で閉じ込めるようにして死守したおかげもあり、クッキーの落下は防げホッと息をついた。

それから、急に引っ張るのは危ないと匡さんに注意しようと目を合わせ……そこで、さっきとは目線の位置が違うと気付く。