「匡くんってすっごいモテるんだよ。あの見た目だし、お金もあるし仕事だってできるし結婚相手としては完璧すぎるから。それに性格だってクールでカッコいいし。麻里奈、今までに十人以上の女を追い払ってるもん」
「うん」
「今はたしかに美織さんと結婚はしたけど、そんなの気にしないで近付いてくる女はいっぱいいる。いい男と結婚したらその先の人生ずっと戦場だって覚えておいた方がいいよ」
私が相当ショックを受けて髪を切ったと思っているのだろう。
麻里奈ちゃんにしては珍しいアドバイスをもらい、温かい気持ちになりながら頷く。
「戦場……うん。覚えとく。麻里奈ちゃんも私を撃とうとしてる戦士のひとりだし、考えてみれば並んでクッキー食べてる場合じゃないよね」
「それは……っ、時と場合によるじゃん。今は別に休戦中だし」
もごもご言いながらもクッキーに伸ばす手が止まらない麻里奈ちゃんにクスクス笑う。
最初こそ、〝認めないから!〟と怒鳴られてどうなることかと思ったけれど、フタを開けてみればとても素直で可愛い子だった。
突然現れた私のことが気に入らないだろうに、こうしてよく顔を出して話し相手になってくれるし、たまにマウントを取ろうとはしてくるものの、そこまで意地悪でもない。私をはめて別れさせようともしない。
『あのご家庭は親子揃ってお口がこう……達者でして』
滝さんがいつかそう言っていたけれど、あれは口先では色々言うけれどそこまでひどくないという意味合いだったのかもしれない。



