「麻里奈、昨日あの後、あの女に会って匡くんとどういう関係かって聞いたの。さっきふたりで話してたの見てたけど、なんの話してたのって」
「えっ……そうなの?」
私が美容院に行っている間にそんなことをしていたのか……とその行動力に驚く。
「仕事の関係でとか言ってたけど、絶対嘘だと思う。だって、それなら会社で会えばいい話だし、相葉だってふたりがカフェにいるのを見たって言ってたじゃん。仕事関係だったら、匡くんは秘書とかつけるしやっぱりふたりきりで、しかもコソコソ会うなんてどう考えてもおかしい。絶対にプライベートだよ」
〝仕事の関係〟が嘘なのは、私にもわかった。
匡さんは、仕事の関係者だったら多分、自分の運転する車には乗せない。社用車を使うはずだ。
約七年前のあの雨の日、あの女性が乗り込んだのは間違いなく匡さんの車だった。だからきっと、個人的な関係なのだろう。
でも、それを全部話したら麻里奈ちゃんの逆鱗に触れる気がする。
「まぁ、でもだからって匡くんとそういう関係かはわからないし。だって匡くんは不貞を働くような男じゃないもん。今は、まぁ、一時的だけど一応美織さんと結婚してるわけだし。いくらあの女が麻里奈ほどじゃないとは言え美人でそこそこ色っぽいにしても、そんなのに誘惑されちゃう匡くんじゃない」
あの女性をそれなりに認めているんだな、というのがわかり、笑みを浮かべてからオーブンに視線を戻した。
オレンジ色の庫内照明がクッキーの生地を照らしているのを眺めながら口を開く。



