赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



だから、あんな大企業である桧山グループの中で匡さんが誰よりも仕事ができると聞かされても、驚くどころか〝やっぱり! だと思ってました!〟と深く頷くばかりだ。

匡さんの立場であれば、ある程度の実績を残せばきっと自動的に代表になれると思うのに、ちっとも手を抜かず上を見て仕事をしている姿はカッコいい以外に言葉がない。

本当に、外見も中身も、どこに出しても恥ずかしくないどころか、世界中に自慢したいほど素敵な旦那様なのだ。

対して……私は一般家庭で育った。
私が二歳の頃、父が病死したため、そこからは母がシングルマザーとして私を育ててくれた。

看護師の資格を持つ母が必死に働いてくれたから、生活が貧しいと感じたことはないし、ふたりでの生活は毎日あたたかく優しかった。

しっかり者の母に、他人に対する思いやりや常識を教え込まれ、特にぐれることもなくすくすく育ち、自分でもそれなりの大人にはなれたと思う。

でもそれは、あくまでも一般的で、平凡な、だ。

とてもじゃないけれど匡さんの隣が似合うような淑女ではないのは、誰に言われるまでもなく私が一番よくわかっていた。

匡さんと私の立っている場所の間には、努力ではどうやっても飛び越えられない溝が……底なしの谷がある。

そこにかけられた細い竹にしがみつきながら、日々どうにか〝匡さんの奥さん〟の正解像に近付けないかと奮闘している。