赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



淡々とした冷静な声にはかすかに不貞腐れているような色が混ざっている気がして、思わず頬が緩む。

三十センチ以上髪を切っても何も感想をもらえないのだと少しがっかりしていたから、時間差での反応が嬉しくて仕方なかった。

〝突然髪を切られたら驚くから、事前に話題にくらいは挙げて欲しい〟

それは親しい人が相手なら当たり前に抱く感情かもしれない。
でも、匡さんと私は夫婦とは言えど少し普通のラインからは外れている気がしていたから、そんな〝普通〟が嬉しく感じるのだ。

ポーカーフェイスの裏では、実は戸惑っていたという匡さんが可愛く思えて、背伸びをして近付く。

ベッドの上じゃなくても、今なら雰囲気的に許される気がして触れるだけのキスをして離れると、匡さんは驚いたのかわずかに目を見開き……それから私の体を抱き寄せた。

「ん……」

今度は触れるだけに終わらなかったキスに精一杯応える。いつも、キスだけでぞくぞくして思考回路が半分破壊されてしまうので、たまには匡さんが腰を抜かすくらいのお返しがしたいと思うのに、なかなかうまくいかない。

頑張って攻めてみても、結局私が丸め込まれ匡さんにしがみついている状態に終わるのは、経験の差なのか元からの才能なのか……私の方にだけある恋心がアドバンテージとなってしまっているのか。

だとしたら今後も匡さんにものすごいハンデを与え続けることになるな……と考えているうちに、頭の後ろから腰にかけて甘い痺れが走り始める。

私の負けを意味していた。