赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



どうにか大人っぽく見せたくて伸ばしている髪は胸より長く、前髪は眉にかかる長さ。その髪に触りながら、いっそ、前髪をなくした方が色っぽく見えるだろうかと考える。

髪をダークブラウンに染めたのは結婚式の二日前だ。あまり明るすぎると子どもっぽく映る気がしてこの色を選んだけれど、果たして正解だったのかはわからない。

〝匡さんの奥さん〟の正解が、ずっと考え続けているのに私には未だにわからないし、鏡に映る自分は限りなく不正解な気がして焦るのはいつものことだった。

「せめて匡さんが恥ずかしくないようになりたいけど……やっぱりお似合いとは言えないよね」

それは外見だけじゃなく、家柄についても言えることだった。

国内だけでなく、世界的にもホテル事業で広く手を広げる桧山グループは、誰でも知っている大企業だ。
その代表を務めるのが雅弘おじ様で、その子息である匡さんは現在は専務という役職に就いている。

ゆくゆくはおじ様に代わって匡さんが代表になることは、血筋からも、そして実際の仕事ぶりからも、誰の目から見ても明らかだと囁かれているのを聞いたのは、披露宴会場でだった。

匡さんは基本的に家には仕事を持ち込まない。
なので、私が直接、匡さんが仕事をしているところは見たことはないものの、匡さんがとても勉強ができて頭がきれることは幼い頃から知っている。

そして、そんな才能に恵まれながら努力を惜しまないところも。