赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました



「でも……匡さん、何も感想言ってくれなかったな」

ネクタイケースを眺めながらぽつりと独り言をこぼす。

私の髪がショートだろうとロングだろうと興味はないにしても、どちらが好きだとか似合っているだとか、口先だけでもいいから言ってくれるかと少しだけ期待してたのに。

匡さんが表に出した感情は、報告もなしにひとりで出かけたことに対する注意だけで、それが少し残念だった。

今までだったら、それで当たり前だと思えていたのに、相葉くんとの会話をきっかけに心がどんどん欲張りになっている気がして、残念なんて感情を無理やり頭の中から追い出した。

「紺か深緑か……ワインレッドもいいかな」

明日は濃いグレーのスーツにすると言っていたから、ネクタイも明るい色よりも暗いトーンの方が全体的に締まってよさそうだ……と選んでいて、そのうちのひとつに自然と目が留まる。

シルバーグレーに紫やワインレッドのラインが入ったデザインは、今日匡さんがつけていた物だった。

それを見ると、どうしても今日会っていた女性が頭を過ぎったけれど、その影を強引に振り落とした。

……誰なのか、聞くべきだろうか。