母と雅弘おじ様は小さい頃から家を行き来していた幼馴染だ。当然母も、桧山家の生活は知っている。
私は、料理や掃除、洗濯はすべて使用人がやってくれるので時間もあるし申し訳なさすぎるのでせめて働きに出たいこと、でもそれを匡さんに反対されていることを報告した。
外出ひとつするにしても、ひとりだといい顔をされない、甘やかされすぎていると話すと、母は『そうなの』と少し驚いた顔をしつつも、笑顔を向けた。
『でも、匡くんなりに思うところがあるんでしょうね。それに大事にしてくれてる証拠よ』
実際のところはわからないし、今はどうしてもあの女性とのツーショットが頭をチラついてしまう。
だから「……そうなのかな」とあいまいに笑うと、母が力強く頷く。
『決まってるでしょ。それについてはお母さんが保証する。だから、安心して匡さんといなさいね。新婚の時期なんてすぐに過ぎちゃうんだから楽しんで』
母は一体、匡さんと私がどんな新婚生活をしていると思っているのか。
〝ラブラブ〟だとか〝いちゃいちゃ〟という響きから誰もが想像するようなカップルを思い描いているならだいぶ違うとは思ったものの、余計ば心配はかけたくないので否定はしなかった。
テレビ電話を終えて、ふぅ、と息をついて顔を上げ、ふと、明日のネクタイを選んでいないことを思い出す。
勝手に美容院に出かけたからか、匡さんのまとう空気が少しピリピリしていて居たたまれなかったので後にしようとウォークインクローゼットの中から我先にと出てしまったんだった。



