「俺に報告した上での滝を連れての外出は好きにして構わないと話しただろ。退屈しているなら買い物にでも行ってくればいい。渡したカードは好きに使って構わないとも言ってあるはずだ」
「退屈というか……もちろんそれもありますけど、大学を卒業してすぐに結婚したので、社会経験もないですし一度働いてみたいんです。学生時代だって匡さんからバイト禁止令が出てたから、私、本当に一度も自分の力で稼いだことがないですし」
学生の頃は『学業を疎かにするな』という、もっともな意見で禁止されたため、私も納得して従ったものの、禁止令が今も引き続いている理由が正直わからない。
社会経験は積んでおいて損はないはずだ。
スーツを羽織った匡さんがすぐに「必要ない」と言い切ったけれど、今度も負けじと言い返す。
「それに、匡さんだって自分が一生懸命働いている間、私がこの家で呑気に好きなことをしていたら頭にきませんか? 匡さんが頑張って稼いでくれたお金を、働きもしていない私が好き勝手に使って私欲を満たしていたら嫌でしょ?」
こんな、おんぶに抱っこの生活は正直誰にとってもよくないと思う。
そう思いじっと見ていると、匡さんはわからなそうに眉を寄せた。
「いや。美織の好きにしてくれて構わないが。欲しいものがあるのか?」
だったらいくらでも買えばいい、とでも言いたそうな顔で言われ……諦めて目を伏せた。



